女性のための漢方って何?

女性のための漢方 〜からだのリズムに寄り添うやさしい知恵〜

そんなふうに感じたこと、ありませんか?

「なんとなく体がだるい」「昔より疲れやすくなった」「毎月のリズムに振り回される」「更年期って、ちょっと不安……」

女性の体は月ごとのサイクル、季節の変化、そして年齢によるホルモンバランスの影響をとても受けやすく、心とからだが密接に関係しています。現代医学では「検査では異常なし」と言われても、本人はつらいという状態がよくありますよね。

そんな“グレーな不調”にこそ、漢方の知恵が力を発揮します。

今回は「女性の体のリズム」に焦点を当てて、漢方の視点から見た対策や養生についてお話ししていきます。

1.女性のからだを支える「血」と「腎」

漢方では、女性の健康に欠かせないものとして「血(けつ)」と「腎(じん)」を特に重視します。

●「血(けつ)」の役割

血は、単に栄養や酸素を運ぶものではなく、「心(しん/精神)」を養い、皮膚や髪を潤し、女性のリズム(月経)を整える大切な存在と考えます。

血が不足すれば、めまい・ふらつき・顔色の悪さ・不安感・不眠などが出やすくなります。また、月経の量が少なかったり、遅れたり、周期が乱れたりすることも。

●「腎(じん)」の役割

「腎」は、生命力の源とされ、女性ホルモンの働きとも深く関わっています。成長、妊娠、出産、そして閉経といったライフステージすべてに関係しており、「腎」の力が弱くなると、生理不順・不妊・更年期障害・老化などが起こりやすくなります。

つまり漢方では、女性の不調を根本から支えているのが「血」と「腎」であると考えているのです。

2.月経トラブルは“からだのサイン”

月経(生理)は、体調のバロメーターともいえる存在です。

「生理痛はあって当たり前」「月経前はイライラするもの」

そう思っていませんか?

漢方では、生理にまつわるトラブルは、“体からのサイン”としてとらえます。

たとえば——

  • 生理痛が強い人は?
     →「瘀血(おけつ)」という“血の巡りの悪さ”があるかもしれません。
  • 生理周期が乱れる人は?
     →「気(き)」や「血」が不足している場合、またはストレスによる「気滞(きたい)」が影響している可能性も。
  • 月経前にイライラ・むくみ・胸の張りが出る人は?
     →「肝(かん)」の働きが乱れていることが多いです。

このように、症状ごとに体質や原因を丁寧にみていくのが漢方の特長です。

3.冷えは女性の大敵。内側から温める力を育てよう

女性の相談で特に多いのが「冷え」。手足が冷たい、腰やお腹が冷える、夏でも靴下が手放せない……。

冷えの原因にはさまざまありますが、主に次のようなタイプに分けられます:

●「陽虚(ようきょ)」タイプ

→体を温める力が弱く、エネルギー不足。寒がり・疲れやすい・朝が弱い人に多い。

【対策】補中益気湯や八味地黄丸などの補陽剤で“温める力”を補います。

●「血虚(けっきょ)」タイプ

→血が足りず、手足まで血流が届かない状態。顔色が悪く、爪が割れやすい、めまいや立ちくらみがある人に多い。

【対策】当帰芍薬散や四物湯など“血を養う”漢方が効果的です。

●「瘀血(おけつ)」タイプ

→血の巡りが悪く、局所的な冷えや痛みがある。肩こり・生理痛・シミができやすい人に多い。

【対策】桂枝茯苓丸や桃核承気湯などで血流改善を。

単なる“冷え性”と一括りにせず、自分の体質を見極めることで、根本的な改善が目指せます。

4.更年期は怖くない。“ゆらぎ”に寄り添う漢方

40代後半から50代にかけて、女性のからだは大きな変化を迎えます。

更年期障害と呼ばれる症状は、「腎」の衰えと「肝」の不調によって起こることが多いと漢方では考えます。

●主な症状:

  • のぼせ・ほてり・発汗
  • 不眠・動悸・焦燥感
  • イライラ・抑うつ気分
  • 疲れやすさ・腰痛・頻尿

このような“心と体のゆらぎ”に対して、漢方薬は、ホルモンの代わりに体のバランスを整え、やさしく寄り添ってくれます。

【よく使われる処方】

  • 加味逍遙散(かみしょうようさん):情緒の波やイライラ・不安感に。
  • 知柏地黄丸(ちばくじおうがん):のぼせ・寝汗・口の渇きなど“熱”の症状に。
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):体力がない・疲れやすい人に。

西洋医学ではホルモン補充療法が基本ですが、それが合わない方・自然な形で乗り越えたい方に、漢方は良い選択肢になります。

5.からだをいたわる、季節と体質に応じた「養生」

最後に、漢方の考え方で大切にされている「養生」について少しだけ。

体に良いことを「続ける」ことが、根本的な改善につながります。たとえば——

  • 朝起きたら白湯を一杯
  • 冷たいものを避け、温かい汁物や発酵食品を取り入れる
  • 夜は早めに寝て、肝や腎を養う
  • 季節の変わり目には“気”と“血”を補う食材(黒豆・山芋・ナツメなど)を活用する

薬だけに頼らず、毎日の習慣がからだを作っていく。そのサポートとして、漢方薬は存在します。

おわりに:あなたのリズムに合わせたケアを

女性のからだは繊細で、でもとてもしなやかです。

だからこそ、不調があっても「年齢のせい」「気のせい」と見過ごさないでほしいと思います。

漢方は、そんなあなたの“声にならない声”に気づき、やさしく調えてくれる医療のひとつ。あなたの今と未来に寄り添いながら、ともに健やかさを育んでいきたい。

気になる症状があるときは、ぜひ気軽にご相談くださいね。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です